先斗町の景観整備に想う、デザイナーのコーディネート能力

先斗町の景観整備に想う、デザイナーのコーディネート能力

井上です!

ヒゲのおじさんに話を聞きに行く。

先日、とある建築資材の活用について先斗町まちづくり協議会の神戸事務局長と話す機会がありました。

先斗町まちづくり協議会さんのHPはこちら!

都市のデザインとかまちづくりにとって参考になるというか、別に筆者はそれに関わる仕事をしているわけではないのですが、共感する部分が多かったので、久々に記事を書きます。

本業の小物販売で店番をする神戸さん。ヒゲがトレードマーク。

ヒゲのおじさんとの出会い

神戸さんは同じ大学、同じ学科の先輩でアルバイト先も同じ。建築系の学部で学部卒の時は最優秀の学生だったにも関わらず、最終的にそのアルバイト先の経営に携わったりしながら何やかんやあって、今の仕事をしておられます。(けっこうなんやかんやある。笑)

僕の神戸さんの印象はアウトプットの多い人。もちろんそれに比例してインプットも多いのですが、とにかくそのアウトプットに押されて周りの人が動いてしまうという感じでしょうか。嫌味な知識のひけらかし方ではなく、会えば刺激を受けるし、また会いたくなる、そんな人。

仕事といってもまちづくりは都市景観や環境という神戸さんにとってのライフワークのようなもんで、本職は先斗町に面した小物の販売をしておられます。

地域みんなで儲ける意識

さて、今回のミーティングの神戸さんの発言で面白かったのは、「地域みんなで儲ける意識」という言葉です。

神戸さんといえば大学時代から海外に旅行や研修に行かれることが多かった(その影響で僕も何度かヨーロッパ貧乏旅行に旅立ちました。)ためか、海外の整った街並みや観光地のあり方をよくご存知です。

景観を形作る要素は様々ですが、少なくとも個人とまちという単位があり、個人のまちに対する意識が結局まちを形作るのです。ヨーロッパや観光産業が整備されている地域は行政からの景観整備の強制力と市民に「地域みんなで儲ける意識」があり、まちのあり方を住民自体が話し合って決めているのだと感じます。

先斗町まちづくり協議会でも同様の意識醸成を図ってきたのでしょう。

 

まちのあり方を住民が決める

ただ、主体性を持ってまちのあり方を考えられる住民のイメージは、京都では先斗町や三条商店街など、企業や飲食店などが街を構成しているエリアに限られるような印象もあります。

なかなか個人がまちに帰属するという意識は持ちにくいのが現実。昔は地域社会に帰属することで得られていた学びや遊び、憩い、そして地域社会の中で完結することもできていた仕事、こういったものが社会の変化によって、今は地域社会に属することなく手に入れることができます。「特色ある地域景観全体を形作ることで地域のブランド力を上げ、経済力を全体として高める」というような強いコンセプトがあれば良いのですが、それも無いのが実情では帰属意識は生まれない。

ですが、理想的には主体性のある住民自体がまちのあり方を協議した上で、ある一定のルールを設定し、行政がそのルールに強制力を持たせ、それに沿って住民の個人の権利を規定する、ルールに設定されていない事項は逐一住民が協議する、というあり方が理想なのだと思います。

先斗町はそれをやった。もちろん、上記の通りまちへの帰属意識を持たせやすい五花街の一つで京都らしい景観を持つ代表的な商業地区だということももちろんあるでしょう。ただ、看板、室外機への対応、そして無電柱化、石畳の復活と次々にまちのあり方を理想に近づけている先斗町さんの推進力はとても驚きではあります。そしてそこに神戸さんのコーディネーターとしての力が発揮されているのは言うまでもないでしょう。

先斗町の北側では無電柱化が進んでいます。

巻き込む力

神戸さんは、景観をはじめ力強くまちづくりを行っている地域には行政や住民に全体と細部のデザインを調整することができる人が必ずいる、と言います。ただ、個人的に思うのはその方がある一定の強制力を持ってまちづくりを推し進めても結局住民の帰属意識が希薄になるだけですし、それではまちが全体として良くはならない。おそらくその方々がデザインだけでなく周囲の人々を巻き込んで自分たちにも考えさせるような力が大きかったというのはあるでしょう。

そう考えると、デザイナーが今後求められる能力っていうのは人との接点のコントロールを始め、物事を推し進める全体の調整能力のようなものが大きいのかもしれませんね。

市長選挙が開催されて、景観政策も大きく変わるかもしれませんね!今回の市長選挙も目が離せませんが、先斗町のまちづくりの今後にも目が離せません!

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